熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
そうなれば、いいお年の役員たちも、優月の笑顔の下の殺気に気付き、尻尾を巻いて退散する。


その『蹴散らし文句』を最初聞いた時は、ちょっと嬉しくてドキッとしてしまったけれど、今の優月は許嫁改め保護者のようだ。
上手く交わせない私が悪いのはわかるけど、進藤さんのことといい縁談話といい、『私を通して』と言われると、私はまだ鳥籠の中で羽ばたいているだけのような気がする。


一度だけ、優月に文句を言ってみた。
けれど彼は表情も変えずに私にこう言ったのだ。


『お互いの堤防は崩壊したんだ。俺はこれまでの処世術で上手く舵を取れるからいいが、綾乃は無理だ。濁流にのまれるがまま流されて、意に沿わない結婚に行き着いたらどうする。そんなことにでもなったら、婚約解消したこと自体、俺は一生後悔することになりそうだからな』


優月の言った『堤防』の意味を、その夜ずっと考えた。
そして行き当たったのは、新入社員の私を社長秘書に抜擢したことだ。


どこに行っても、優月は私を『秘書として連れ回してますが、彼女は私の許嫁です』と紹介して回った。
ちゃんと仕事をしているのに、いつも『優月の許嫁』という扱いを受けて、私は最初、それがとても嫌だった。
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