熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
進藤さんから優月の女性遍歴を聞き出した時、それまでの女性関係を清算する目的もあったのかと思った。
許嫁がいると公言していても、しつこく縁談を持ちかけられていたことも知ってる。
そういうのを門前払いするにも、実際に私を紹介するのが手っ取り早い。
つまり私は優月にとって、女性たちや縁談話を寸断する為の堤防だった。
そういうこと。


だけど同時に、優月が私の堤防になってくれていたことを、この一週間で痛感した。
私の想像以上に、旧華族の生まれというのはステータスになるようだ。
許嫁という関係を解消した今、優月は自分だけでなく、私にまで湧いて出る縁談を蹴散らしてくれている。
それがわかるから、構い過ぎとか過保護だとか、文句を言えなくなってしまった。


とは言え、あまりにストレスフルで、優月のこめかみの青筋は日に日に色濃くなっていく。
それを気にしていたら、一週間はあっという間に過ぎ去った。


そして今日。
週末金曜日の午後。


今週最後の外出を終えて本社の社長室に戻ると、ドアを閉める私の背中で、優月はスーツの上着を脱いだ。
大きな溜め息をつきながら、応接セットのソファにちょっと乱暴に放り投げている。


優月の行動に気付いて振り返り、私も小さく肩を落として息をつきながら、彼の上着を手に取った。
優月は執務机に回り込みながらネクタイを緩め、脱力したように椅子にドカッと腰を下ろす。
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