熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「あ、進藤さん」


このまま寝入られてしまったら大変だ。
私は慌てて進藤さんに声をかけた。


畳の床を這って、テーブルを回り込む。
進藤さんの隣でちょこんと正座して、その頬を軽くピタピタと叩いてみた。
『んっ』と短い反応が返ってきて、とりあえず意識があることにホッとする。


「進藤さん。優月が戻って来たら、今日はお開きにしましょう」


軽く揺さぶりながら、そう続ける。
進藤さんからは『ん~』と唸り声が返ってくる。
どうやら意識は繋いでくれた様子だった。


「綾乃ちゃん……?」


ぼんやりと、その目が開く。
私のことは認識できているみたいだけど、かなり呂律が怪しい。
私はほんのちょっと苦笑しながら、「はい」と答えた。


「一人で帰れそうですか? 無理そうだったらタクシーの手配を……」

「ん~……大丈夫」


言葉とは裏腹に、あんまり大丈夫じゃなさそうな声が返ってくる。
私は更に苦笑を重ねながら、優月を気にして、なんとなく格子戸に目を遣った。


出て行った時の足取りはしっかりしていたけれど、優月は大丈夫だろうか。
ちょっと心配になって、外に出てみようかと腰を浮かせる。


その時。


「綾乃ちゃん」


進藤さんが、私の名前をさっきよりはしっかりした声で呼んだ。
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