熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
一瞬沈黙が過ったせいか、アトリウムのざわめきが一際大きくなって耳をくすぐる。


「多分優月はね、俺がそういう汚い真似して、優月の大事な物を奪ったの気付いてるから、俺を殴ったんだよ。じゃなきゃ、酒の席とは言えあんなに激高しない」


進藤さんが、自嘲気味に呟いて目を伏せる。
嫌なリズムで胸が騒ぐのを感じながら、私は身体の脇に垂らした手をギュッと握り締めた。


「そ……」

「進藤。俺はそこまで清廉潔白じゃない。本当に事故だったとしても、問答無用で殴ってたよ」


背後からコツコツと足音が近付いてくるのが聞こえ、私は反射的に振り返った。
それと同時に、その言葉が耳に届く。


スラックスのポケットに両手を突っ込んだ優月が、私たちのすぐ前まで歩いてくる。
社長の姿に気付いた社員たちが、まるで道を空けるように脇に寄る中、堂々と背筋を伸ばした優月は、まるで花道を歩くように悠然として見えた。


「ただ、お前がわざとしたかどうかは、この際どうでもいい。……綾乃の記憶も、俺が上書きしたから」

「え?」


コツッと踵を鳴らして足を止めた優月に、進藤さんが訝し気に眉を寄せる。


「綾乃はお前に悪意があったと思いたくないんだ。だから、そういうことにしておいてくれよ。余計なことは、綾乃の耳に入れたくない」

「……へえ」
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