熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
それを聞いて、一瞬緊張が走り、私の身体が強張ってしまう。


「だが、ちょっと待ってくれないか。正直なところ、俺自身も混乱してる」

「……混乱?」


額に手を当て目を伏せる優月に、私は戸惑いながら訊ねた。


「進藤をぶっ殺したいくらい腹が立ったのも、誰にもやらないと思ったのも、全部俺の本心だ。金曜日の夜はそういう感情がぐちゃぐちゃになって、冷静に考える前に身体が動いた。……お前が進藤にキスされたこと、俺が認めたくなかった」


優月は目線を落としたまま、ちょっと早口で続けた。
彼が何を言おうとしているのか想像もつかなくて、緊張感ばかりが高まっていく。
私は無意識に胸元で手を握り締めていた。


「……だけど」


優月はその一言でつい今の言葉を打ち消し、肩を落として大きな息を吐いた。
鼓動を掻き乱されていた私は、彼の逆接の言葉をどう捉えていいかわからず、心に不安が過った。


「激情に駆られて俺は綾乃にキスしたが……実はあの後、猛烈に恥ずかしくて」


次の言葉に身構えた私に、優月は宣言通り混乱を滲ませた声で、ボソッと呟いた。


「え?」

「恥ずかしい、って言うのと、今まで自分で守り抜いてきた聖域を、自ら犯した罪悪感みたいなのと」


言葉を重ねる毎に、優月の声に滲む混乱は強まっていく。
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