熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月に腕を引かれ、私は役員用のエレベーターホールに辿り着いた。
優月が左手首の腕時計に視線を落としながら、エレベーターホールのボタンを押す。
四台あるエレベーターの一番奥に、到着表示のランプが灯った。


「あの、優月」


ここに来てやっと、私は彼に呼びかけることができた。


「何」


優月は私に横顔を向けたまま返事をしてくれるけれど、その声は思いの外素っ気ない。
おかげで私も一瞬怯んでしまった。


進藤さんが私にしたことがわざとだったとか、優月が言った『誰にも渡さない』って言葉のこととか。
聞きたいこと、質したいことはたくさんあるのに、そのどれも声にならない。


結局何も言えないまま俯いた時、エレベーターのドアが開いた。
優月が先に中に入り、ドアを開けて待っていてくれる。


「綾乃」


名前を呼んで促され、私も静かに歩を進めた。
私が中に乗り込むと、優月がボタンを押してドアを閉めた。


ふわっと浮かび上がるような感覚を覚えた後、優月が軽く壁に背を預けた。
そして、低い天井を見上げてふうっと息を吹く。


「……言いたいことも聞きたいこともたくさんあるだろうってことは、俺もわかってる」


優月は私の心を見透かして、先回りするようにそう言った。
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