月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】


かとりももこ……。


「生前の記憶はあるということか?」


「ああ。……だが、小路の若君には話したんだが、心残りがあるらしく、どこにもいけないでいるんだ」


「……浮遊霊になっていると?」
 

黒を見上げると、軽く肯いた。


「冬芽に頼まれてから面会したんだけど、泣いてばかりでなあ……まともに話が出来ないんだ。だから、漂っている理由もわからない。冬芽が桃子を見つけたとき、」
 

ふと、黒が冬芽に目配せをした。


「『あの子に逢いたい』……そう言ったんだ。それきり一度気を失ってしまってな。起きてからは泣いてばかりだ。問いかければ、ほんのたまにだけど、断片的な言葉は話す。名前もそんな感じで聞いたんだ。

どうしたもんかと思ったんだが、他の霊体に見つかって揉めても嫌だったから、ここへ連れて来た。ここなら俺がゆるした者以外は入らないからな」
 

そう言って、名前の漢字を教えてくれた。

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