月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
冬芽は、先に姿を見せていた鬼たちに「先に戻っていてくれ。出迎えの準備を」と声をかけて下がらせた。
鬼は総ていなくなり、冬芽だけが残った。
「実は、ある女性に惚れたんだ」
「色恋話はこの万年花畑頭としてくれ」
と、黒を指さした。
黒は「え?」と間の抜けた笑顔で見て来る。
「いや、せめて最後まで聞いてほしいんだが……」
「おう」
戸惑う冬芽に応えると、せきばらいしてから話し出した。
「その方は、いわゆる幽霊なんだ」
「………霊体に惚れたのか?」
「簡単にいうとそうだ。詳しい説明は道中でも構わないか? 屋敷に、彼女がいるんだ」
「幽霊……」
俺が呟くと、冬芽は肯いた。
「生前の名前はわかっている。華取桃子(かとり ももこ)というらしい」