月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「少し、厄介な家でね。白、今回の件は急を要する。焦(じ)れた鬼どもが桃子の抹殺もしかねないだろう。
俺から訊くことは白の矜持(きょうじ)にふれるだろうから最初に訊いておくけど――俺から話すか?」
「話してくれ。知っていることは総て。被害を出す余裕なんざ誰にもやらん」
俺の返事に満足したように、黒藤はまた椅子に座りなおした。
「華取は絶えたと言っても、本家壊滅という状態で、華取家の血を引いている人間はまだ存在している。
現状で華取家当主という地位を与えてしかるべき人間も一人いる。
華取在義(かとり ありよし)。現在県警本部長だ。
本家の末子ながら傍系の養子出されたために難を逃れている。そして華取在義が、桃子の夫だ」
「……では、華取桃子は嫁いでからの姓か」
「ああ。そして、在義との間の子ではないが、娘が一人いる。華取咲桜(かとり さお)。白と同じ高一だ」