月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「娘……桃子が逢いたがっているのは、夫か娘の可能性が高い、が……」
「だろうが、厄介なのは桃子の出自だ」
「なんだ?」
「神宮美流子(じんぐう みるこ)――桃子が生まれた時の名前だ」
「神宮で厄介って――まさか、神祇(じんぎ)神宮の娘なのか⁉」
思わず大きな声を出してしまった。
だが、それもやむを得ない話が転がり出て来た。
神祇神宮――数ある神祇家の中でも、総主家である司(つかさ)家に次ぐ高位の一族。
……今は滅びた一族。
「どういう流れで壊滅した本家筋の娘である美流子が生き延びていたのかはわからないが、間違いなく最後の神宮と言って過言ない」
「神祇の娘なら、霊力は高い。冬芽の屋敷から連れ出しても他の霊に影響されることもないはずだ。……お前はそこまで知っていながら、何故渋っている? そもそも、俺に依頼を廻してきた?」
眉を寄せて問うと、黒は困った顔で「うん」と答えた。