樫の木の恋(中)
官兵衛が酒を片手に笑いながら話す。
「半兵衛もやりますなぁ。このように格好良いうえに天下人の織田殿からとるなんて。織田殿が優しい方じゃなければ、斬られてるところですよ。」
「半兵衛、わしが優しくて良かったのぉ!」
確かに織田家じゃなければ、主君の妾に手を出したなど斬られたとしても不思議はない。
突っ走ってしまったが、今考えてみると恐ろしい話だ。
「大殿には感謝しております。」
こんなときくらいでしか、大殿に感謝の意を伝えられない。
「そういや、つい先日。長浜城に泊めてもらったのですが、その時宴を秀吉殿が開いてくれましてね。その時、秀吉殿が……」
にやにやと秀吉殿を見る官兵衛が、大殿に何を言うか分かったのだろう。秀吉殿が焦って止めようとする。
「か、官兵衛!」
「良いではないですか!織田殿も聞きたがっていますし。」
「秀吉。少し大人しくしていろ。」
大殿に嗜められて、秀吉殿は大人しく座る。しゅんとしている秀吉殿は凄く可愛い。そう思って笑っていると秀吉殿が、唇を尖らしてふんっとしている。