樫の木の恋(中)
「で?何をしたんじゃ?秀吉は酒癖悪いからのぉ。」
官兵衛が面白おかしく、大殿に事細かに説明している。それを聞きながら秀吉殿は、それがしの近くに来て何故かそれがしのお猪口になみなみと酒を注いでいる。
「何してるんです?」
「…私ばかり恥ずかしいから、半兵衛が酔っぱらってるところを見たいなと思って。」
「酔っ払ってもいいですが、その時は秀吉殿がそれがしの面倒見てくれます?」
「構わんよ。半兵衛は酔っ払うとどうなるんじゃ?」
面倒を見てくれるかと頼むと、何故か嬉しそうな秀吉殿。
「いやぁあまり酔っ払わないので…。まぁでも、すぐそこに秀吉殿がいたら、襲ってしまうでしょうね。」
「なっ…、め、面倒ってそっちか!?」
「ええ、そうですよ?男は飲むと好きな方としたくなってしまうのですよ。特に秀吉殿のように可愛らしい女子ですと、余計に。」
ぱくぱくと口を動かしているが、全く声が出ていない秀吉殿。
「せ、せんからな!」
ようやく声が出ても、それが精一杯だったようだ。
「おや、一度言った事を覆すなど秀吉殿らしくありませんね。」
「うるさいっ。」
可愛く怒りながら、くいっと酒を飲む秀吉殿。今日はあまり飲まないと言っていたのにな。まぁでも、酔っ払ったら酔っ払ったで可愛らしいから良いのだが。
「なんじゃ、半兵衛。また助平なことを秀吉殿に言うとるのか?」
いつの間にか話が終わっていたのか、官兵衛がこちらの話に入ってくる。