樫の木の恋(中)
小谷城に戻って数日後に、今浜の地に建設していた城が完成したとの報が入った。
すぐに今浜城へと移り、秀吉殿は満足気に城からの光景を眺めていた。
「それにしても大殿から賜った名城小谷城を捨て置いて良かったのですか?」
今更ながらではあるが疑問を持たざるをえない。
「ああ、それでなんだが、この今浜という名を長浜に変えようと思う。」
「長浜…にございますか。」
「ああ、大殿の名から一字頂くことにした。大殿は喜ばれておったよ。」
なんとも抜かりのない。
角を立てずに小谷城から、この長浜城に移る準備をしてあるとは。
「さすが秀吉殿。」