樫の木の恋(中)
「まぁそういうな。秀吉は隠すのが上手すぎて分からんが、半兵衛は嘘をついておるようには見えん。」
「ですが!」
ちりっと空気が発火したかのように震えていて、柴田殿が再び声を荒げた佐々殿を睨む。
佐々殿は顔を強張らせ、体を小さくする。
「成政、少し黙っておけ。」
「あはは!佐々殿の小者感…!」
「秀吉…憎まれ口をきくな。」
佐々殿と同じような殺気を秀吉殿は向けられたのに、秀吉殿はなにも気にしない。むしろくすくすと笑うのをやめようとはしなかった。
「半兵衛も嫌な思いをさせてしまったな。」
「それがしは別に…。」
「いや、お主の大事な秀吉を悪く言ってしまった。悪かった。」
「いえ…。お気になさらないで下され。」
小さく頭を下げる柴田殿。すぐにさっと上げ、それがしに小さく笑った。