樫の木の恋(中)
戦は久秀がいる信貴山城の近くに城を任されている元筒井家の筒井順慶殿に寄って、かなり有利に進められていた。
いや、筒井殿のお陰では無いな。
久秀に仕えていた者が、本願寺に援軍を要請しに行くと見せかけて、織田家に寝返り久秀の状況を事細かに筒井殿に伝えたお蔭だった。
まぁその寝返った者も、元々は織田家に仕えていたのだから、勝手に城主の久秀が寝返っただけで、その者は織田家に帰ってきただけで何も悪くない。配下の人心を掌握出来ていない久秀が悪い。
「よお、秀吉。」
軍議を始める前に秀吉殿は声を掛けられた。
秀吉殿よりも随分と若いそのお方は、大殿の第一子、織田信忠殿だった。
「おや、若。しばらくぶりですな。長篠の戦い以来お会いしておりませんでしたか。」
「そのくらいになるな。此度の戦、秀吉の今後が掛かっておるのだろう?親父殿が言ってたぞ。」
「ええ、やらかしてしまいましてね。」
でも考えてみたら、秀吉殿は大殿とは十以上歳が違うが、若殿とは六つ程しか歳が違わない。若殿の方が歳が近いのか。
そんなどうでもいいことを考えていた。
「あまりやらかしてくれるなよ。親父殿が隠居したら、秀吉を俺の一番の家臣にする予定なのだから。」
「おや嬉しいお言葉。では、若のご期待に添うためにも、ここは頑張って乗り切らねばなりませんね。」
「おお、そうしてくれ。」