樫の木の恋(中)
「とぼけるなよ。親父殿が秀吉のことが一番好きな事くらい皆気づいている。まぁそれに怒ってるのは母君の方で俺には関係のない話だがな。」
そんなことくらい気づいているだろうと言わんばかりの若殿の態度に秀吉殿は苦笑いをする。
「大殿の奥方達にはそりゃ嫌われますよねぇ。大殿は格好いいから、政略結婚だとしても惚れてる方は多いですものね。」
「俺の母君も親父殿のことが好きだからなぁ。なぁ、なんで親父殿じゃなくて配下の半兵衛なんだ?親父殿は天下の織田信長だぞ?」
いきなりのそんな質問をぶつけられて秀吉殿が驚く。そして、こちらを見てきて秀吉殿は可愛らしく笑った。
「好き…だからですかね。大殿も好きですけど、半兵衛のものとは種類が違うというか。半兵衛とは共にありたいのです。」
「そういうもんか。」
「そういうものですよ。若がもう少し大人になって、酸いも甘いも知れば自ずと分かります。」
どこまでも妖艶に、それでいて綺麗に笑みを見せる秀吉殿。若殿はその笑みを見て、少し頬を染めていた。