樫の木の恋(中)
「秀吉殿、若殿に手でも出す気ですか?あのように色っぽい笑みなど向けて。」
軍議が終わり、自らの隊へと戻る最中質問を投げていた。
「出さんよ。だが、懐柔しておいて損は無かろう?」
「絶対若殿、惚れてしまいましたよ?これ以上それがしの敵を増やさないで下さい。」
そう言うと秀吉殿が大きく笑った。
「半兵衛は本当に嫉妬深いなぁ。別にわしが若に惚れるわけではないのに。」
「ですが、若殿が惚れてしまえば秀吉殿を手に入れようと躍起になってしまうやもしれないじゃないですか。」
そう言うと秀吉殿は至極悪そうな笑みを浮かべる。
「わしは大殿がいなくなったら、織田家を任される約束をしている。今から次期当主に根を張る必要はあるじゃろうよ。………惚れさせておけば、操りやすかろう?」
小さくそれがしにしか聞こえない声で、悪どい思想を吐く。このお方は時々悪どい考え方をされる。
やはり国主程になるには悪どい手も使わなければ行けないのだなとため息をついた。
それでなくとも若殿は前から秀吉殿のことを気に入っているのに、それ以上に深い繋がりを作ろうというのか。
「半兵衛に嫌な思いをさせてしまうのは分かっている。申し訳ないとも思う。だが、こればかりは許せ。」
「それがしは心配なのです。」
「大丈夫じゃよ。わしが好きなのは半兵衛だけじゃ。」
そう満面の笑みを向けられては言葉など出なかった。
つくづくこのお方と付き合うのは大変だなと実感させられる。しかしそれでもお側に居たかった。