樫の木の恋(中)
若殿の計らいにより、城攻めの指揮は秀吉殿が仕切る事になった。明智殿もすんなりそれを受け入れてくれるあたり、やはり秀吉殿が大事なのだろう。
まぁ他にも本願寺家の撃退などもあるので、そちらに回ってくれた。
信貴山城はたいした城ではなく、兵もそんなにいなくて落とすことなど容易いことだった。
此度の戦はそれほど大きなものでも無かったために、それがしは隊を率いず秀吉殿と共にその都度戦略を練っていた。
秀吉殿は次々に隊へと細かく指令をだし、それがしもそれに追われていた。
吟味し、二人で話し合いながら指令を出していく。
「女狐め!!」
不意に城の中からそんな声が聞こえた。これは久秀の息子の久通の声だろう。
こんな所にまで届く声は、怨みでいっぱいだった。
「ふふっ女狐は優しいから、一匹も逃さんよ。」
秀吉殿の悪い笑みと声がひやりと聞こえる。
その言葉通りに城の出入り口などは全て兵を配置し、塞がれていた。
「そもそも謀叛などする方が悪い。織田家に背いた罰じゃよ。」
その言葉に背筋が凍りそうになる。
回りにいた伝令するための兵も顔をこわばらせ、殺気を出した秀吉殿を凝視していた。
それに気づいた秀吉殿は殺気をしまい兵に笑いかけた。
兵が去っていった後、秀吉殿はこちらを向き首をかしげる。
「わし、怖いかのぉ?」
「秀吉殿の殺気は屈強な男でも冷や汗もんですよ。」
「阿呆な。こんなにも優しくて、か弱い乙女がそんな怖い訳無かろうて。」
「か弱い乙女はこんなところで軍を指揮しておりませんよ。」