樫の木の恋(中)
三成が去った後、秀吉殿は口元に笑みを浮かべながらも目は真剣にこちらを見る。
「半兵衛、そんなに心配するな。私はお主が一番好きじゃし、お主以外は考えられんよ。」
そう言って秀吉殿から口付けをしてきた。
「秀吉殿…やはりやめてくだされ。」
「じゃから武士に二言は無いと」
「秀吉殿は!女子なのですから…。」
そう言うと秀吉殿は至極冷たい顔をした。やってしまったと思った。秀吉殿は女子よりも武士でありたいと思っているお方。武士ではなく女子なのだと言ってしまった事に後悔する。
だがそれでも譲れないものもある。
「ほう。女子、ねぇ。わしは武士じゃよ。体は女子やもしれんが、心は武士じゃ。いくらお主でもそこは変えられん。」
「しかし、それがし以外と口付けなど…!」
秀吉殿はため息をつく。ため息と共に吐き出されたかのように秀吉殿の殺気が体を蝕み捕らえて動けなくする。
「……半兵衛。妬いてくれるのは嬉しい。しかし、わしの私物化はいかん。」
「…は?」
「わしは確かにお主のものじゃ。しかしな、それよりも前に織田家の駒じゃ。上に行くためには、女という武器も使わにゃならん時もある。」
それがしの女であるよりも、織田家の駒というのが重いのか。それほどまでにこのお方は織田家の駒であることに重きを置いておられるのか。