樫の木の恋(中)
「しかし今回は…」
「今回は?今回三成が土龍攻めを上手いこと出来たのは、褒美のおかげじゃろうよ。……半兵衛、最近ずっとそうじゃが、そうやってわしを束縛したがるが、お主疲れないのか?」
「は…?」
「……明智殿とも仲良うしておきたい、若とも仲良うしておきたい。その他にも手の内に入れておきたい人は多い。織田家を懐柔するには、女の武器を使う事もどんどん増えていくじゃろうよ。」
足が暗闇に支配されたような、そんな感覚に陥る。
このお方はそこまで割り切れるのか。大殿がいなくなったら織田家を任せると言われたからと言って、そんな風に割り切れるものなのだろうか。
「お主との付き合いを皆に明らかにしたままにしておるのも、人というものは兎角、他人のものはよく見えるもので、障害がある方が燃えたりするからじゃ。」
事実、明智殿などはそれがしや大殿という障害があるがために、秀吉殿をひどく手に入れたがっている。
それに秀吉殿にかかれば、一度それがしが周囲に付き合いを明かしてしまったが、それを揉み消す事くらい訳無いだろう。
だが、そんなことをせずにそのままにしてある。
「……それがしとの付き合いを…、利用、しているという認識で良いのでしょうか…?」
「はっ……不満そうじゃな。別にお主の事は本当に好きなのじゃよ?本当に好きだが、それをちょろっと利用したところで問題はあるまい。」
好きという秀吉殿から発せられるその言葉が、徐々に徐々に軽く感じてくる。己の好きという気持ちをそんな器用に利用出来るものなのか?
それがしにはそんなことは出来ない…。
秀吉殿は大切な女子なのだから。