樫の木の恋(中)
「わしが男をたぶらかそうとも、お主の女であることに変わりはない。それで良いではないか。」
良い…のか?
秀吉殿は以前、今川家に仕えていたときも、同じような事をしていたと聞いた。
しかし、それを穢らわしいと感じていたのでは無かったのか?
それがしの考えていた事が分かったのか秀吉殿が小さく笑う。
「お主は気にしないと言ったではないか。」
「……その気にしないの意味は、過去にそういうことをしていたとしても気にしない…という意味です。……現在は入っておりません。」
「じゃー入れといてくれぃ。」
そんな軽く言わないで欲しかった。それがしだって、その事実に傷ついていない訳ではない。
秀吉殿がそうやって生きるしかなかったのだと理解した上で言った発言だというのに。
「大殿と約束したのでは…?織田家ではそのような事はしなくて良い…と。」
以前、大事そうな思い出として秀吉殿が語っていた。
しかし秀吉殿の反応は予想外だった。
「あははっ!半兵衛は案外あまっちょろいのぉ!可愛いやっちゃなー。」
何故笑う?しかもそんな無邪気そうに。
もう、分からなかった。今目の前にいるお方は本当にそれがしが愛した秀吉殿なのか…?
もう辛かった。