樫の木の恋(中)
「そんなもん理想じゃ!実際はなぁ、女子というだけで、女子が武士だというだけで皆顔をしかめる。ましてや女子が国主じゃぞ?敵などわんさかおるよ。女のくせに武士だと?城主だと?国主だと?と思う輩は多い。」
「…。」
「じゃが、わしは大殿に任せると言われた。この女のわしにじゃぞ?この間の柴田殿との件で思い知ったが、やはり敵はいない方がいい。敵がわんさかおっては、織田家を安泰へと導けないからな。」
言いたい事は分かる。
織田家内の敵は作っておきたくないのだと。どんな手を使っても懐柔しておきたいのだと。
女であるがために、その苦渋は仕方の無いことなのだと。
しかしその発言にそれがしは後ろめたさを感じてしまった。
「要は、それがしが秀吉殿が女子なのだと、明かしたのがいけなかったのだと言いたいのですね…。」
秀吉殿は笑いながら、扇子でそれがしの頭を軽く叩く。
「阿呆め。そんなもの気にしてどーする?どうせいつかは知られてしまうんじゃよ。明智殿が知った時点でその可能性はなかなかに高かった。それにあの早い時点で明かされたお陰で地盤は早めに固められた。それで良いではないか。」
ふわっと笑う秀吉殿。
今この時だけは、それがしが愛した秀吉殿なのだと実感出来た。