恋蛍2
「あの人に、ここまで連れて来てもらったんよ」
「はさっ、そうだったんか」
葵先生が振り向いてにっこり笑う。
「ありがとうね、結弦」
「いや、たまたま通り掛かってさ。だから、オレはなんも」
と右手を振るジェスチャーをすると、すかさず美波姉ェネェが「やるねえ」とオレの背中を平手打ちした。
「あがー。美波姉ェネェよーもー」
「そうさ、結弦。紹介するさ」
と葵先生が彼女の折れそうに華奢な肩を抱く。
「この子さ、結弦と同い年なんだしさ」
小石原(こいしはら)いろは。
16歳。
京都祇園で200年続く老舗呉服屋のひとり娘。
家の都合でこの島にひとり移住してきたのだ、と葵先生が教えてくれた。
「よろしくね、結弦。夏休みが明けたら、結弦たちと同じN高に通うからさ。いろいろ教えてやって」
葵先生の後ろで「よろしゅう頼みます」と彼女は小綺麗に一礼した。
彼女は、今日から葵先生の家で生活するらしい。
そんな老舗の店のひとり娘が?
家の都合で?
移住? この、与那星島に?
待て待て待て、そんな16歳のひとり娘をこんな離島にひとりで出す親なんておるんか?
納得できんことだらけ。
いきなり情報過多過ぎて直ぐには受け入れられず、間抜けな返事をした時、ポケットでスマホが震えた。
「あぁ……はぁ」
律からのラインメッセージだった。
「はさっ、そうだったんか」
葵先生が振り向いてにっこり笑う。
「ありがとうね、結弦」
「いや、たまたま通り掛かってさ。だから、オレはなんも」
と右手を振るジェスチャーをすると、すかさず美波姉ェネェが「やるねえ」とオレの背中を平手打ちした。
「あがー。美波姉ェネェよーもー」
「そうさ、結弦。紹介するさ」
と葵先生が彼女の折れそうに華奢な肩を抱く。
「この子さ、結弦と同い年なんだしさ」
小石原(こいしはら)いろは。
16歳。
京都祇園で200年続く老舗呉服屋のひとり娘。
家の都合でこの島にひとり移住してきたのだ、と葵先生が教えてくれた。
「よろしくね、結弦。夏休みが明けたら、結弦たちと同じN高に通うからさ。いろいろ教えてやって」
葵先生の後ろで「よろしゅう頼みます」と彼女は小綺麗に一礼した。
彼女は、今日から葵先生の家で生活するらしい。
そんな老舗の店のひとり娘が?
家の都合で?
移住? この、与那星島に?
待て待て待て、そんな16歳のひとり娘をこんな離島にひとりで出す親なんておるんか?
納得できんことだらけ。
いきなり情報過多過ぎて直ぐには受け入れられず、間抜けな返事をした時、ポケットでスマホが震えた。
「あぁ……はぁ」
律からのラインメッセージだった。