恋蛍2
ごめん
今日ムリになった
フェリーが通常運行になったため、予想外に観光客から予約が入り店を手伝うことになった、という内容のラインメッセージだった。
メッセージを見て一気にテンションが落ちる。
オレのタコライスがぁぁぁ。
「えーっ、なにさあー。まじでかねー」
律の家はタコライス屋だ。
律の父さんが作るタコライスはとにかくうまい。
シャキシャキのレタス、ピリ辛のサルサソースとチリソース。ジューシーなミートソースにチーズがマッチして濃厚で。トッピングは完熟のアボカドととろーり温玉。
律の父さんのタコライスはオレの大好物なのだ。
タコライス……食べたかったのにさあ。
「はあー」
もう口がタコライスになっとったオレはがっくり肩を落として、待合室の古ぼけたソファにどっさり背中から沈むように座った。
今日唯一の楽しみがなくなってしまった。
「なんね? どうしたのさ」
美波姉ェネェが不思議そうに首を傾げる。
「あー、んー」
オレはだらしない返事をして、そのままズルズルと崩れるようにソファに寝転んだ。
「律のやつ、ドタキャンさあ」
昨日は昨日で台風のせいで外に一歩も出れず、1日中家におってヒマでヒマでどうにかなりそうだったのにさ。
せっかくいい天気になったっていうのに、今日もまたヒマになってしまった。
翔琉は母さんと一緒に民宿に行きよったし、夕方まで戻らんし。
あ。
オレも民宿に遊びに行こうかね。
律の父さんのタコライスにはかなわんけど、タダでうまい飯食えるし。
……いや。
ダメさ。
いま行ったら間違いなくオレまで手伝いさせられてしまう。確実だ。
……仕方ない。
おとなしく家に帰ってシャワーでも浴びてさっぱりしてからゲームでもしようかね。
それこそ、昼飯はカップラーメンでいいしさ。
「さぁーて」
帰ぇろうかねぇー。
フン、と勢いをつけて起き上がりこぼしのように上半身を起こす。