恋蛍2
イノセントパープル

天使か悪魔か

ビー、ビビ、と枕元でスマホの振動ではっと目を覚ました。


「……あぁーもぉー、誰ね」


ぶつくさと小言を言いながらも手が勝手にスマホ画面をタップし、ライン画面を開く。



 
   今日ヒマかね?
   課題手伝ってほしくてさ
   もちろんタダとは言わん
   父さんのタコライス付きさ
   どうだね?


『タコライス』の文字を発見した瞬間、眠気は完全に吹っ飛んだ。


いいね。
悪い話じゃないさ。


あさイチのラインメッセージは、親友であり幼なじみでもある喜屋武律(きゃん りつ)からだった。
午前8時。
かああっ、と顎が外れてしまいそうなほどの大あくびをして一気に起き上がる。


スマホを右手に握ったままベッドを出て窓辺に立ち、勢い良くカーテンを両サイドに開けた。

「うっ」

一気に差し込んで部屋を明るくした7月の朝日はもはやすでに強烈で、とっさに目を細める。
両腕を上にぐぐーっと伸びをすると、もうひとつおまけにさっきよりも大きなあくびが出た。

清潔に澄んだ青空に、ちょっと流れの早い真っ白な雲。集落中のフクギの木の葉だの花々たちが気持ちよさそうに揺れておる。
昨日までの台風がウソみたいに穏やかな朝だ。


「いーやあ、晴れたねえー」


最高にいい天気さ。


   仕方ないね
   手伝ってやるさ


メッセージを送ると瞬時に既読になり、また直ぐに秒で返ってきた。


   助かった!
   さすが結弦だね
   昼頃ウチに来れるかね?


OK 、とへんなゴーヤーのキャラクターのスタンプを押した時だった。


こつん、こつん、と部屋のドアがふたつノックされ、数センチ弱開いたドアの隙間から小さな顔を覗かせたのは10歳下の弟、翔琉(カケル)だった。


「兄ィニィ」

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