御曹司を探してみたら

(コンペに優勝でしたと言ったってそれも一回きりじゃない!!)

自分で受けた企業は全滅で原田先生の口利きで周防建設に入社したわけだけど、いざ入社してみると他の人とレベルが全然違っていて私は浮きに浮きまくっていた。

“何でお前みたいのがいるんだ?”的な視線が痛い……痛すぎる。

“夢”を叶えるためとはいえ、こんなことなら大人しく田舎に帰れば良かったのかも。

「あ―…早宮サン?」

すっかり諦めムードを漂わせながら廊下をトボトボ歩いていると、誰かに声を掛けられた。

えっと、確か……武久くんだっけ?

入社してから3ヵ月ほど経っているが、武久くんと会話するのは初めてだった。

「何でしょうか?」

武久くんはいつも仏頂面で不機嫌そうに眉間にしわを寄せていて、どことなく近寄りがたい人だ。

細部まで緻密に計算されたデザインの数々は絶妙な調和を生み出していて、不愛想な面構えとは対照的に繊細そのものだ。

実は武久のデザインって私好みだったりするんだよね……。

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