御曹司を探してみたら
「あんた、プレゼンめちゃくちゃ下手くそだな」
「……は?」
失礼千万、不躾としか言いようがない口調に私はしばし絶句してしまった。
ほとんど会話したことない人にどうしてそんなこと言われなきゃいけないの!?
「もっと自分の長所を生かしたらどうだ」
そう言うと、先ほど私が資料として配ったポートフォリオのコピーを己の顔の横に片手に掲げた。
「まず、このポートフォリオ!!フォントが小さい!!漢字も間違ってるし、配置が見にくい!!」
ひええっ!!まともに話もしたことないのに怒られた!!
矢継ぎ早に欠点を指摘され、ついおののいてしまう。
「ったく、玉川美大の原田先生はこんな簡単なことも指導してくれなかったのか?」
原田先生をご存じで?あらやだ、先生ってば有名人?
「原田先生は……芸術家気質でこういう資料の類はあまり重視しない人だったから……」
原田先生の指導方針は一風変わっていて、学生にテーマは一切与えられない。作りたいものを自由に作らせることで、創造性を伸ばすことに重きを置いているのだ。
原田先生の評価で重要視されるのは、突拍子もない発想やアイデアであり、綺麗なドレスをまとった言葉の羅列ではない。
そんな指導をずっと受けていたせいか、作品の魅力を他人に伝える術というのを全く学んでこなかったのが私にとって大きな誤算だったのである。