御曹司を探してみたら
以上のことを10分ほどの時間をかけて、懇切丁寧に説明すると武久くんは大きなため息をつきながらこう言った。
「手伝ってやるから、今から直せ」
「へ?」
手伝うって……。まさか武久くんが!?
「言葉で表現できないところは、他の所で補え。折角才能があるのにもったいないだろ」
なんのてらいもなく褒められると、こっちの方が恥ずかしくなってしまう。
才能がある、なんて初めて言われたかも。
「あ、ありがとう……」
「さっさと取り掛かるぞ。ボヤボヤすんな」
「あ、待ってよ!!」
敵に塩を送るような真似をするなんて、武久ってばほんっとうに変な奴だった。
しかしながら、やつに面倒を見てもらったおかげで私は無事にセレクションに合格し、同じ意匠設計部に配属されることになったのである。