御曹司を探してみたら
(そろそろ寝よう……)
今の私は心身ともに疲れ果てていて、身体は休息を必要としていた。
ところが、リモコンで照明を落とし布団に潜り込み目を瞑ってみても一向に眠れる気配がない。
……武久の匂いがそこかしらからして、妙な気分になって寝返りをしてしまう。
最後にこの香りを強く感じたのは……。
(なんで……武久は私にキスしたんだろう……)
武久は私にキスをしたことをおくびにも出さない。
うやむやにされたみたいで胸のつかえはとれず、思い出しては悶々としてしまう。
(ああ、もう!!)
こんなんでひとつ屋根の下で暮らして大丈夫なの!?
扉の向こうには本物の武久がいて、鍵のないこの部屋にはいつだって入ってこられる。
武久の家に初めて泊ったこの日、私は眠れぬ夜を過ごすこととなったのである。