御曹司を探してみたら
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「杏?どうしたの?」
パソコンのディスプレイをいつまでもぼうっと眺めている私を不審に思ったのか、わかっちが肩をトントンと叩いてくる。
条件反射でビクッと身体を震わせると、今度は慌てて図面に目を走らせる。
「ご、ごめん!!わかっち!!」
今は仕事に集中しなくちゃ!!
ふうっと大きく息を吐いて気分を変えようとしても、なかなか思い通りにならないのは近頃降って湧いた幸せのせいなのかもしれない。
「もしかして武久となんかあった?」
わかっちはウシシと何かを期待しているかのように笑いながら、私のわき腹に肘鉄を命中させる。
「え!?何もないよ!?」
からかうわかっちをかわそうとしても、正直者の私の目は自然と泳いでしまう。
……それを見逃すわかっちではない。
「杏~?」
わかっちは引き出しからいつぞやご活躍あそばされたハリセンを取り出し、スパンスパンと素振りを始めたのである。
「わあ!!待って!!話すから!!ちゃんと話すから!!」
お願いだからハリセンで脅すのはやめてくれ!!
平身低頭お願いすると、わかっちは渋々ハリセンの矛先を収めてくれた。
危なかったと冷や汗をぬぐって仕事を再開する。
これに懲りて考え事をするのはひとりでいる時にしようと心に決める。