御曹司を探してみたら

「どこにする?」

「この間、食べたイタリアンが良くない?」

「あそこ混んでない?」

私とわかっちは昼休みになると速攻で、財布片手に会社の外に飛び出した。

誰にも邪魔されずじっくり根掘り葉掘り聞きたいというので、たまには外で食べようということになったのだ。

周辺のランチ情報をネタにとりとめのない会話をしながら歩いていると、そろりそろりと背後から車が近づいてきて私達の真横に止まった。

信号もないのにおかしいなと首を傾げていると、窓がゆっくりと下がる。

「杏さん」

私を呼び止めたのは……。

「福子夫人……」

……先日と同じようきっちりと着物を着こなした、福子夫人であった。

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