エキストラヒロイン
【作戦 その2】
ぶつかってみよう。
一昔前のアニメでよくある曲がり角の出会い。
廊下でパンをくわえて走ることは出来ないけど、大量のノートを持つことならできる。
「山田さん、本当に任せて大丈夫?」
「よ、余裕っす…」
数学の先生がクラス全員分のノートを1人で抱えるあたしを不安げに見つめる。
さっき来栖くんがどこかへ行ったところは把握できてる。
教室へ戻ってくるときに必ず通るであろう道の壁に背をつけながら、ゆっくりと歩く。
う、腕がぷるぷるしてきた。
「あんたよく頑張るわね」
「公ちゃん!」
そんなに感心してるなら少しぐらい持ってくれてもいいものを、それだけ言い残して公ちゃんはすたすたと歩いていった。
薄情な女だ…。
ぎりぎりと歯を軋ませて、来栖くんがこちらへ来てくれる時を待つ。
「ねえねえ」
「はい?」
神経を研ぎ澄ませている最中だってのに、とんとんと肩を叩くのはどこのどいつだ!?アァン!?
柄の悪いチンピラのように眉間にしわを寄せ、振り向くと。
「あっ、急に話しかけてごめんね。なんだか重そうだったから…」