エキストラヒロイン



次第に押し寄せる人々で道が混み、公ちゃんから離れないように服を掴もうとしたとき。

突然、黒い影が覆い被さる。



「ぐぇっ」



何者かの腕はあたしにラリアットを食らわせ、イルカショーを求める人波の中を、なんと逆走し始めた。


視界に映るのは、暗い館内の微かな青い光に照らされるずるずる引きずられる自分の足。

公ちゃんはあたしがいなくなったことに気づかず、そのまま人混みへと紛れてしまったようだ。


あたしの脳内に浮かぶ二文字。



“ 誘 拐 ”



―――都内女子高校生が校外学習で訪れた某水族館で誘拐された模様。

少女の行方は分かっておらず、未だ捜索を続けている状況です。

誘拐された少女の友人に話を聞くと「気がついたらいなくなっていた」と証言しており、目撃情報を集めています…、



やだやだ!そんなのいやだ!

まだ死にたくない!



このままでは殺されると察し、なんとか逃げ出すために噛みついてやろうと大きく口を開ける。


すると、ある香りが鼻を掠めた。


この異様に良い香り、匂った覚えがある。

なんだっけ。



誰かの………、ハッ!!




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