エキストラヒロイン
仏頂面な横顔すらも眩しい来栖くんを見つめる。
優しく微笑む紳士な王子様も良かったけど、命令口調で腹黒い王子様もマゾっ気を誘うというか、本当に漫画のような美青年だなぁとしみじみ実感した。
あたしだけがその彼の秘密を知っている。
今まで来栖くんの瞳にすら映されなかったあたしが。
現実って、すごい。
「………あのさ、山田」
「うん?」
「臭い」
「エ゛ッ!?」
「離れて。気持ち悪い」
光の速さで来栖くんから離れる。
服の匂いかな!?体臭!?口臭!?
くんくんと自分の服や肌を嗅いでみるけど、特に臭いところはなくて、いつもと変わらなかった。
もともと…あたしって臭い女だったの!?
「あたし…そんなに…」
「あー、違う。臭いっていうのは、香水の匂い」
「これか!」
鞄からお気に入りの香水を取り出して、来栖くんに向けてシュッと香りをかけてみると、額を押さえて頷いてくれた。
「さっきから色んな香水の匂いが混ざって…気持ち悪い…」
「まあ、あのあたりの女子はみんなつけてるからね!でも臭くないよ!いい匂いするし!あたしも来栖くんにいい香りの女の子って思ってほしくてつけてたもん!」
「その匂いのせいで頭痛しかしないんだけど」
来栖くんには逆効果だったんだ…。
ちゃんと男の子受けも良いって評判の香水にしたんだけど、結局は大嘘か。