朝はココアを、夜にはミルクティーを
ギリギリ遅番の人が残っているかもしれない時間帯。
従業員用の駐車スペースに車を停め、小走りで通用口のドアノブに手をかけた。
ぐるんとノブを回せたので、心がパッと明るくなった。
「やった!開いてる!」
女子更衣室のロッカーへ直行し、自分のところを開いてよくよく見ると、やはりお財布がコロンと落ちていた。
よかった、とホッとして手に取る。
その時、ギィ……という錆び付いたような音が聞こえて、思わず身を固くした。
ドアの方を見ても、私がさっき開けたのと同じような開き方をしていて、別に誰かがいるような気配もない。
通用口が開いていたのだから、誰か遅番の従業員が残っていることは確かなのだが、誰がいるんだろう?
更衣室をあとにした私は、一応残っている人に声をかけてから出ていこうと思い、人の姿を探す。しかし、いっこうに見つからない。
薄暗い廊下で、「すみませーん」と小さく声をかける。
……返事はない。
もしかして、誰かが通用口の鍵をかけ忘れた?
今日の遅番は誰だったか、シフトを見てみようと事務所へ向かうことにした。
これで本当に鍵のかけ忘れだとしたら、始末書モノだからだ。
遅番スタッフに連絡して、鍵は私がしめておくことも伝えなければ。
足早に廊下を進み、事務所の前に立った時に違和感を覚えた。
事務所のドアの隙間から、明かりが漏れている─────
誰かいるのか、それとも電気の消し忘れか。
何も考えずにドアを開いた。