朝はココアを、夜にはミルクティーを


一見するとラブコメ映画のその洋画は、奥行も何もない単純な恋愛映画だった。

自分の見た目に自信のない主人公の女の子は、もうすぐ三十歳を迎える。

モテない人生を送ってきた彼女は、突然二人の男性からアプローチをされて翻弄されていく。
イケメンだけど誠実で明るい同僚と、地味だけど堅実で優しい後輩。
どちらも、中身はとても素敵。

結末は、思っていた通りイケメンと結ばれてハッピーエンドだった。

ただ、そこに行き着くまでの過程はかなり面白かった。
彼女が恋愛に右往左往する姿や、ぽっちゃりした身体なのに下着姿で自宅で踊っている姿、お酒にのまれていつも凹ませていたお腹をつい緩めてしまってスカートのボタンがはちきれるところなんかは、かなり笑えた。

極めつけは、ラストシーンでイケメンと結ばれてキスをしながらそのままベッドへ……というところ。
盛り上がって、イケメンが彼女をお姫様抱っこでベッドへ運ぼうとするも、まったく持ち上がらない。ビクともしない。
それを、彼女は大笑いしてごまかし、スキップしながら彼の手を引いてベッドまで移動するところは、もう涙が出るくらい笑ってしまった。


「映画、楽しかったです!」

思い出し笑いをして口元が緩んでしまう私に気づいた亘理さんが、飲み残したコーラを映画館のスタッフさんに渡しながら微笑んだ。

「俺もなかなか楽しめました」

「最後なんか特に!でもあれくらい彼女が明るければ、あの二人はすっごく楽しく過ごせそう」

「やっぱり女の人って顔がいい人が好きですか?」

「そんなことないですよ」

並んで歩きながら、即座に否定する。

私は過去の恋愛で、ちゃんと相手の中身を見極めることができなかったダメな部分。それを、あの映画の主人公は二人の男性の性格をしっかり把握した上でイケメンを選んでいた。
見た目は冴えないがとても優しい後輩を選ぶこともできたはずだけど、なんでも開けっぴろげにできる相手よりも、ほんの少しだけ恥じらいを持てるイケメンを選んだ。

そういうのにも、少しは共感できた。


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