記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「で、どこ行くの?」
「んー、着いてからのお楽しみってことで、のんびり座っててよ。あっ、これそこのベーカリーで買っておいた朝食ね」
体を捻って後ろの座席に手を伸ばした朔は、紙袋を掴んで体を戻すと、雪乃の膝の上に置いた。
中を覗いてみると、サンドイッチとマフィン、コーヒーが入ってる。
「好きな時に食べていいよ」
そう笑った朔は、シートベルトをつけてエンジンをかけると地下駐車場から車を出した。
日曜日の朝ともあって、トラックが少ないからか何となく車の通りが少なく感じる。
高速道路にでも乗るのかと思っていると、車は一般道を進んでいく。
「朔は……食べなくていいの?」
中にはコーヒーの入った容器が二つと、小さめなサイズに切られたサンドイッチの入った箱が二つ、マフィンが一つ入っていて、見るからに朔の分だと分かる。
「一個ずつ渡してあげるよ?」
「えっ! いいの?」
「うん、だって運転してたら食べられないでしょ? 私だけ食べるのも不公平だし」
「……ありがとう。まずコーヒーに砂糖とミルク入れといてくれる?」
雪乃は言われたとおりコーヒーのカップの蓋を外し、砂糖とミルクを入れて混ぜると蓋をしてボトル置きにコーヒーを置いた。
同じように自分の分も用意すると、サンドイッチの箱を二つ取りだし膝に置くと、両方の蓋を開けて信号が赤になるのを待つ。
タイミングよく信号で止まったところで、雪乃はサンドイッチを一つ取って朔に渡した。
「ありがとう、ヒナ。本当はお腹空いてたんだ」
そう言って笑った朔に、雪乃は妙な照れくささを覚えてごまかすように自分の分のサンドイッチを食べた。
それでも、彼の食べるペースを観察して、タイミングよく次を渡すを繰り返し、信号が青に変われば、雪乃は渡すの止めて自分の分を平らげた。
次に引っ掛かった信号で朔は食べ終え、雪乃は自分の為だけに用意されていたマフィンを口にした。