記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
こんな気持ちにはなりたくなかった。
また恋をしてしまっては、別れが来た時に今度こそ立ち直れなくなってしまう。
朔の気持ちを疑っている訳ではないが、幸せや恋人同士が長続きしないことを雪乃は知っている。
「んー、どうかしたか?」
剥き出しになっている首の後ろに、啄むようなキスが与えられる。妙なくすぐったさに体をよじると、小さな痛みを感じるほどきつく吸われた。
知識として知ってはいたが、初めてつけられるキスマークに、口からは甘い声が漏れてしまう。
「卓馬の邪魔が入って止めたことの続きをしたいところだけど、俺の家にヒナが泊まれるように買い物に行こう?」
「へえっ? 別に特に必要なものはないけど……」
「ほんとうに? 寝巻とか、洗面用具とか……ヒナ用のベッドとか」
訳の分からない事を言い出す朔にぎょっとして体を捻れば、唇を嵌まれる。
「んっ……ちょっと、まって……ベッドなんてわざわざ買わなくたって」
「いいの? 俺は別に毎日一緒のベッドで寝るのは構わないけど」
「別にソファーで構わないし」
「俺が大切な相手をソファーなんかで寝かせると思う? ヒナがソファーで寝るっていうなら、俺も一緒にソファーで寝るか、俺だけがソファーでヒナがベッドってことになるけど?」
そんなことさせられる訳がない。
「んんー! 分かった、一緒に買いにいきます! だから離れて」
最後にねっとりとキスをしてから朔は唇を離した。
「オーケー。じゃあ、家具屋に行こうか」
息を弾ませる雪乃とは違い余裕の笑みを浮かべる彼に手を引かれ、家具屋に向かうべく地下駐車場に下りて行った。