記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「もうすぐ午後六時だよ」
「え? そんなに寝てた?」
「寝てたね。昨日の疲れが残ってるのに、朝から二ラウンドもすれば、そうなるさ」
とんでもないことを平気な顔で言われているが、朔が言うと爽やかに聞こえるのだから不思議なものだ。
「そういう朔は……ぴんぴんしてるのね」
「俺は、ただ最高にいい気分ってだけだよ。長年の夢が一つ叶ったからね」
「夢?」
「そう、夢だよ。イギリスに行ったとき、いつか日本に戻ってヒナと付き合うことが出来たら、俺のものにするってね」
手を伸ばしてきた朔は、だらりと垂らされた雪乃の左腕を撫で下ろした。
「まさに、いまのその感じが……俺のものって思えていいね。無防備で、信頼されてるって雰囲気がさ」
手の甲まで撫で下ろした彼は、雪乃の手を取ると自分の唇まで引き寄せると、薬指の辺りにキスをした。
「これをコレクションに加えてくれると嬉しいな」
そっと親指で撫でられて、薬指に感じる違和感にようやく気がついた。