記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「違うの。あなただから嫌だとか、そういうことじゃないの。家族と親しい人以外と狭い空間とか逃げられない状況とかにいるのに堪えられないだけだから気にしないで」
上着のポケットを漁ってカードキーを取り出し、卓馬の家の玄関を開けた。
「話なら、こっちの部屋にして」
中に入ってリビングに進みながら明かりを点けていくと、後ろからため息が聞こえてきた。
「とりあえず、そっちで待ってて。部屋にコート置いて来るから」
「ここに部屋!?」
横を通り過ぎようとしたら、手にしていたコートを掴まれた。今までも、誰もが同じ反応を見せた。
もちろん、最初に卓馬に自分の部屋を用意したと言われた時には、さすがの雪乃も驚いた。
断りもしたが「しんどいことがあった時の避難所だと思えばいい」という言葉に、甘えてしまったのだ。
「そうだけど……それがなに?」
「もしかして、卓馬と結婚してる?」
がくり、と一気に力が抜けてしまった。交際してるのかと問われたことはあっても、結婚しているのかと言われたことはない。
呆れながら振り返り、朔を睨みつけてやったが、冗談ではなく真面目な顔をしていた。
だから、雪乃は彼の目の前に左手を差し出した。