記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!
「この手に指輪が見える?」
「……見えない」
「見合いうんぬんの話を忘れたの? 馬鹿なこと言うんだったら、話なんてしないで帰って」
「ごめん、悪かったよ。君のこととなると俺……」
苛立ちの種を植付けられた気分だ。
百パーセントありえないが、卓馬と結婚していたら見合いなんて苦痛を受けずにすんで、やけ酒の末にホテルのベッドで目覚めるなんてこともなかったのにーー
腹立たしげにソファーにコートを投げると、朔が座った場所から離れているスツールに腰掛けた。
「コートなんてどうだっていいわ。話って何? したいんだったさっさとして帰って」
ぞんざいに言い放つと、ソファーに座った彼は諦めたように前屈みになって膝に腕をついた。
「今日はやめたほうがいいかもしれない。怒らせてしまったし、冷静に話が聞けるとも思えない」
「だったら、帰れば?」
腕を組んで視線を窓に向けながら言えば、ソファーから立ち上がり歩き出す気配を感じた。
「ただし、今帰ったら……二度と話は聞かないから、もう会うこともないわね」
ぴたりと足音が止まった。