記憶の中のヒツジはオオカミだったようです!



 思えば、数週間前にショッピングモールの抽選会でロボット掃除機が当たったとメールが来ていたのを思い出す。さらに「ジェイソン」と名付けたとも。
 その行き先を目で追っていると、開けたままにしている雪乃の部屋にも入って行った。
 器用に椅子や棚を避けていく様子は、なんだか可愛い。

 ちょこまかと動く様子を眺めていると、唐突にスマートフォンから音楽が流れ始めた。
 足元を動き回る「ジェイソン」を避けながらベッドに近づき、スマートフォンを手に取った。音で電話であることは分かっていたが、表示されていたのは卓馬の名前で、期待していた相手ではない。

「もしもし?」

「おはよう、雪。もしかして、起こしちまったか?」

 けっこう早めの時間だというのに、卓馬の声に寝起きの影はない。

「ううん、起きてた」

「そうか、ならよかった。昨日はちゃんと食べたのか?」

「食べたよ。朔と」

「ならいい」

 何がいいのか、雪乃にはさっぱり分からなかったが、部屋の掃除を終えて出て行く「ジェイソン」に合わせて、リビングへと移動した。



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