ラブ・マスター? 【ラブレッスン番外編】
由宇さんの胸の中に収まった俺の耳には、トクン、トクン…と少し早い由宇さんの胸の音が聞こえてくる。







『相田部長とは結婚しないわ。…少し前にもう終わってたのよ


さっき逃げ出したのも、沢木さんの結婚相手がマサじゃなくて、あなただと思ってたから。

誤解だってわかってあなたを探しに店を出たのよ?』







そして頭上から聞こえてくる声。







それはとても優しくて、ゆっくりとした口調。俺が理解できるように話してくれてるんだとわかる。







「逃げようとしたんじゃ…ないんですか?」







俺が勘違いしていただけ?













胸元から見上げた俺に頷いてゆっくりと俺の頭から腕を解き、少し距離をとった。






『ずっと探してたって言ったわよね?

あなたと私の初めての出会いは、屋上じゃないのね?』







尋ねたその言葉には、俺の答えが何かもう知っているようだった。






< 293 / 344 >

この作品をシェア

pagetop