零度の華 Ⅱ
『金の力は怖いものだな』
「怖いなんて思ってもねーくせに」
『思っているさ。金で回っている世の中だ。犯罪なんかより怖いだろ?』
「世間を騒がせているお前より、怖いものなんてねーよ」
鼠(マウス)にしては珍しく褒めてくれるじゃないか
だが、あたしなんかよりも金というものは怖いものだよ
取引には必ず金が関わってくる
大金なほど人を動かせ、世界を動かすことができる
人間の欲深さってのが分かるから、尚更悍ましい
空港内にアナウンスが流れ、そろそろ飛行機へと乗り込まないといけないようだ
『これ、お前に預ける』
そう言ってアタッシュケースを渡す
受け取る鼠(マウス)はあぁと一言
『ヘマするなよ』
「するわけねーだろ。僕はちゃんと仕事を果たす」
『じゃあ、後でな』
あたしは鼠(マウス)のもとを離れ、飛行機へと乗り込んだ