直感的結婚~恋はこれから~
何となく稲田さんの気持ちが分かる。私も同じように泰士さんがかっこいいから、本当に私でいいのかと時々思っている。

だけど、結婚して10年。ずっとそんなことを思っていたのだろうか?

そうだとすると切ない。

稲田さんは「そうなんですか」と言う森さんの相槌のあとに、お茶を一口飲んでから再び口を開く。


「だけど、結婚して五年が過ぎたときに娘が生まれまして、劣等感がなくなりました。娘は妻に似ていなくて私に似ていてかわいそうだと生まれてすぐに思ったのですが、妻の言葉で目が覚めました。パパに似ていてものすごくかわいい、私はパパの子を産めてとても幸せだと言ったんです」


奥さんは正直な思いを告げて、ポロポロと涙を溢したそうだ。本当に自分に似ていてかわいいのか、妻に似た方が絶対にかわいいのにと一瞬ひねくれた考えを稲田さんはしたが、奥さんの涙で気付いたらしい。

妻は自分と娘を愛してくれていると。

だから、自分も今まで以上に妻を愛し、幸せにしようと心に決めたそうだ。

だけど、決めたとしてもなかなか言葉にも形にも出すことなく、また五年の歳月が流れてしまった。
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