直感的結婚~恋はこれから~
母が涙ぐんで「うん、うん」と何度も頷く。父は視線を上に向けてから、泰士さんを見た。


「美琴のことを頼む」

「分かりました」


しっかりと顔を見合わせて、二人はがっしりと握手をした。

結婚してからでは反対はできるわけがないと苦笑されたが、父も母も優しく頷いてくれた。

突然の結婚に、今さらな挨拶に、納得してもらえるか不安だったから、了承してもらえて良かった。

ホッとした私たちは目を合わせて、微笑み合う。



遅い時間だったので、家にいたのは30分ほどで、私たちはまた幸哉の運転する車に乗った。

向かう場所はホテル。


「ちょっとどうなるかと思ったけど、あの頑固な父さんが泣きそうな顔したのを見て、驚いたよ」

「お父さんが泣きそうだった?」

「姉ちゃん、気付かなかった? 涙堪えていたよ」

「そうなの?」


全然気付かなかったが、私のありがとうございましたで涙を微かに浮かべていたらしい。

厳しい父だったが、私のわがままをいつも最後には許してくれていたから、厳しさの中に優しさを感じることが出来た。
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