キミを奪いたい
「何ちゃん?」
「あ、すみません!笹原 あやのと言います!」
「あやのちゃん?可愛い名前ね」
うわぁ……
なんて言うんだろう。
リョウと似てるから、こんなに穏やかに微笑まれると戸惑うというか……
リョウはクールだったから、優しかったけどこんな風に微笑まれたことはない。
だから、少しドキドキしてしまう。
「ねぇ、あやのちゃん、今時間ある?」
「えっ?」
時間?
「あ、もしかして今から診察とか、」
「いえ、もう終わりました」
そんな残念そうに言われたら、とてもじゃないけど嘘なんか言えなくて。
ブンブンと首を振って「行きます」と返事をした。
「良かった。じゃあ、今から一緒に中庭に行かない?私、ここの中庭好きなの」
「私もここの中庭好きです」
「ジュースでも買って行こっか」
まさかリョウのお母さんと中庭でお茶することになるなんて……