キミを奪いたい



「隣、座って?」

「……はい」



相変わらず可愛いベンチに先に腰をかけたリョウのお母さん。

隣に座るよううながされ、遠慮がちにそっと腰を下ろす。



「……」


座ったものの、何を話せばいいのか分からなくて、

チラッとリョウのお母さんを見れば、



綺麗……



リョウのお母さんは目を閉じて空を仰いでいた。



その姿はまるで全身で風を感じようとしてるように見える。



長い黒髪がそよ風になびいて揺らめいていて、

その隙間から見える色白の肌は、長期間日光に触れていないように見えた。



この前は突然リョウと会ってしまったから気づかなかったけど、よく見れば部屋着のような軽装をしている。


今日も会ったということは、リョウのお母さんはこの病院に入院してるんだろう。


じゃあ、この前リョウと会ったのはお母さんのお見舞いってこと?

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