キミを奪いたい
引かれるがままに着いていくと、たどり着いたのは非常階段へ続くドアの前。
ドアを開けると螺旋階段があり、格子の隙間から連なるビルと綺麗な夕焼けが見えた。
先に踊り場部分に腰を下ろしたなっちゃんが「座って」と自分の隣をポンポンと叩く。
それに従って腰を下ろせば、
「ごめんね、無理矢理連れてきて」
座るのとほぼ同時にまた謝罪された。
「ううん、大丈夫だよ。っていうか、どうしたの?」
わざわざこんな所で話だなんて、よほど重要な話なんだろうか。
「……」
「……なっちゃん?」
いくら待っててもなっちゃんは何も言ってくれなくて。
なにか話したいから連れて来たんだよね?
と、そう疑問に思ってると、やっとなっちゃんが小さく口を開いた。
「あーちゃん」
「……」
「……」
また口をつぐむなっちゃん。
一体どうしたんだろう?
「なっちゃ───」
「あーちゃん、付き合ってるって噂、ほんとにしない?」