溺愛はいらない。



機嫌を良くした彼は、ニコニコと私を抱きしめて離さない。


芯って…見た目と違って時々キケンな香りがするよね…。


付き合っていた頃に少しだけ感じていた何かにちょっとだけ気づいてしまった自分がいたけれど、もうこの腕から離れることなんてできないだろう。


彼が月日をかけて私の周りを囲った檻から逃げることはできない。

まぁ、もう一生そんなバカなことしないだろうけど。


「芯」

『ん?』


私を見下ろす芯の瞳は5年前と変わらず、その綺麗な瞳に私だけを映していた。


「愛してる。」


溺愛なんていらない。

芯から逃げてからずっと、そんなことを思っていた。

過度な愛情は、時に人を狂わせる、と。

でも、違う。


愛された分、愛すればいい。

それができなかったから、昔の私は芯から逃げたんだ。


無償の愛なんてない。

私だって、芯だって、愛した分だけ、相手の見返りを求めてた。

愛した分だけ、相手から注がれる愛の深さと比べては、不安がって。

だけど、注がれた愛を超えるくらいの愛情を相手に見せることで、不安だとか疑心暗鬼だとか吹き飛んで行く。


『––俺も。愛してるよ。』


ほら、こうやって、愛は循環するもの。

これからは、私も彼への愛情を表に出していこう。

そうすれば、もっともっと、2人の間には幸せが溢れて行く––。


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